東南アジアの中心に位置するタイは、今や日本企業の「海外進出の最前線」として高い注目を集めています。実際に、タイには6,000社を超える日系企業が既に進出しており、その多くがバンコクを拠点に事業展開を行っています。
本コラムでは「タイ進出のメリット」をテーマに、タイという市場の魅力と、そこに進出することの利点を解説します。
日系企業が集まるタイの魅力とは
まず最大のメリットは、「圧倒的に多くの日系企業がタイに存在する」点です。
バンコク日本人商工会議所(JCC)は、在外日本商工会議所の中でも世界最大級の規模を誇ります。2024年4月時点での会員企業数は1,656社にのぼり、これは中国・上海の2,374社に次ぐ世界第2位の規模です【出典:バンコク日本人商工会議所】。
さらに、JETRO(日本貿易振興機構)が発表した「タイ日系企業進出動向調査2024年度(2025年2月)」によると、タイに進出している日系企業数は6,083社に達しており、これはアジアのみならず世界の中でもトップクラスの数字です【出典:JETRO タイ日系企業進出動向調査2024年度(2025年2月)】。
このように日系企業が多数存在することで、日本語対応が可能な現地スタッフや通訳、翻訳、会計、法律といった周辺サービスも充実しています。特にバンコクでは、日系マーケットをターゲットにビジネスを始めることで、日本と同様の営業戦術が活かせ、事業成功への足がかりを得やすい環境が整っているのです。
一極集中型マーケットで得られるビジネス上の利点
タイでは、日系企業のほとんどがバンコクから半径300km圏内に集中しています。これにより、他の国(例:中国やアメリカ)のように複数都市に企業が分散することなく、営業戦略やネットワーキング、イベント開催、物流計画などを効率的に設計することが可能です。
また、同じ理由からバンコクにおける在留邦人の数も非常に多く、在外日本大使館への登録ベースで、都市単位で世界第2位を誇っています【出典:外務省海外在留邦人数調査統計】。
日本人コミュニティの存在は、BtoCビジネスを展開する企業にとって大きな利点です。なぜなら、タイに住む日本人は中間層〜富裕層に該当し、購買力が高く、またブランドや品質に対する意識も高いため、日本式の営業がそのまま通用するマーケットがすでに形成されているからです。
拡大する中間層と消費市場の成長
リーマンショックや2011年の大洪水といった経済的打撃を乗り越えてきたタイは、近年所得水準が大きく向上しています。特に首都バンコクでは、1人当たりの平均年収が10,000ドル(約140万円)を超え、中間層〜富裕層が急増中です【出典:タイ国家統計局AVERAGE MONTHLY INCOME PER HOUSEHOLD】。
この消費層の成長は、小売・飲食・医療・教育・不動産など幅広い業種において大きなビジネスチャンスをもたらしています。実際に、大手デパートの高級ゾーンは常に盛況であり、日本食レストランや日本のドラッグストアチェーンの進出も進んでいます。
メコン経済圏のハブとしてのタイの戦略的価値
タイ進出のメリットは、タイ国内にとどまりません。タイはカンボジア、ラオス、ミャンマーといったメコン経済圏の中心に位置しており、これらの新興国へとアクセスするためのハブとしても重要な役割を果たしています。
多くのタイ企業がすでに近隣国へ進出しているのと同様に、日系企業もまずタイで拠点を構築し、そこからカンボジアやラオス、ミャンマー市場へと段階的に展開していくケースが増えています。
メコン諸国は人口増加・経済成長ともに今後の拡大が期待される地域であり、その玄関口となるタイの重要性はますます高まっていくでしょう。
まとめ|タイ進出が日系企業にとって最適な理由
タイ進出のメリットは、日系企業の集中、日系向けインフラの整備、安定した治安と政治、そして将来性ある周辺市場との近接といった多くの要素が相まって形成されています。特に「まずは日系マーケットで事業の感触を掴み、その後にローカル市場へ広げていく」という戦略が取りやすい点は、他国にはない大きな魅力です。
これから海外進出を検討している企業にとって、タイは「最初の一歩」として非常に有効な選択肢と言えるでしょう。