2025.05.09タイ生活

海外だからこそ特に備えたい「もしもの事態」

毎年春は日本の年度替わりのタイミングでお別れが多いのですが、今年はタイ永住組と思っていた人も含めて、本帰国の知らせを本当によく聞きました。コロナ以降日本人の帰国に際して、後任の日本人が来ない、あるいは家族の帯同がない例も増えているようで、大切な人を見送って、なかなか埋まらない喪失感を覚えた方も少なくないかもしれません。そんな時分の3月28日にミャンマーのマンダレー近郊を震源地とする地震発生で隣国タイのバンコクでも未曾有の揺れが起きました。在住者も新たに渡航という方も、かつてない不安に苛まれたり動揺を禁じ得なくなったりしたのではないでしょうか?

日本だと先ず机の下に潜るよう教わってきましたが、その常識を覆されるような状況を目の当たりにして、仕事でも家庭でも、その時々に取るべき行動を正しく取れるか、ということに私は自信を持てなくなりました。しかし、バンコクでは発生当初の衝撃の割には日常生活への支障が限定的であったこと、ソンクラーン(タイ正月)の休暇やイベントも自粛ムードにはならなかったこと等で、もうすっかり「喉元過ぎれば熱さ忘れる」となっているように感じます。地震対策に関しては私からは何も言えませんが、今回は海外暮らしの視点で「もしもの事態」に生存確率を上げるためのお話をさせていただきます。

何だかんだ言って日本人にとって暮らしやすいタイ。特にバンコクでは、その暮らしを東京と変わらないように捉える方も結構いらっしゃいます。大体のことは身振り手振りや笑顔と心意気でどうにかなりますしね。しかし、日本と比べた場合の「事件」と「事故」の発生率の高さと、暮らしやすくても「外国」であることは、どれだけタイでの生活に慣れても忘れないようにしたいものです。外務省HPでも「タイにおける凶悪事件の発生率は、日本と比べ非常に高い水準で推移」と安全対策基礎データのはじめに挙げていますし、世界保健機構(WHO)警察庁のデータを見比べると、近年のタイの交通事故死者数の割合は日本の約10倍です。この半年ほどの間にも、パタヤで喧嘩の仲裁に入った日本人男性が刃物で刺され、旅行で訪れていた日本人インフルエンサーや駐在していた日本人経営者がタイでの交通事故でお亡くなりになっています。

これは私の個人的な体験例ですが、日本人の知人がバンコクで交通事故に遭い、緊急手術が必要なものの本人意識不明で、財布に私の名刺があったからと「ご家族ですか?」と某公立病院から電話がかかってきたことがありました。その時は最終的に大使館を経て日本のご家族と連絡がつき最悪の事態は避けられましたが、搬送先としては「せめて家族の同意がなければ手術できない」という話でした。また、報道によると2023年に交通事故で意識を失った外国人観光客がある私立病院に入院・治療を拒否され公立病院に搬送される途中に死亡したとされる事例がありました。その拒否が事実であればタイでも厳しい法的措置の対象となるものの、患者に親族が同行しておらず、医療費が支払われない可能性が拒否理由だったとも報じられました。いずれにせよ、故人がもう戻らないことに変わりはありません。

皆さんご本人やご家族・従業員の方々の身に上記のようなことが起きても、速やかに然るべき人に連絡が行くようになっていますでしょうか?
今どきはスマートフォン一台に色々なものが集約されていますが、いざというときに使えないこともあります(私が交通事故に遭った際は、衝突の衝撃で起動しなくなりました)。古典的な方法ではありますが、ご家族や会社の人事総務担当者の電話番号、保険やかかりつけ医の情報等をパスポート(のコピー)と共に常に所持品の分かりやすいところに入れて携帯することをお勧めします。また、最近は帯同家族と会社が直接連絡することも減っていますが、一刻を争うときに「配偶者の電話番号が分からない」なんてことにならないよう、企業でも関係者の緊急連絡先の整備・点検を今一度していただけますように。

<本記事はチャオプラヤー・タイムズ 「南洋茶話2ndシーズン」第2回を許可を得て引用・転載しております。>

 

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