タイ駐妻100人インタ⑧ やっぱりキラキラ
インスタ的な「映え」を念頭に「結局『キラキラ』は一部の人、あるいは生活の中の極一部」と書いた私ですが、その一方で、「やっぱり駐妻さんはキラキラしている」とも思うようになりました。インタビューは主に、人の少ない日中のアイリッシュパブで行ったのですが、その薄暗い店内で、インタビュイーの笑顔が何とも輝かしく。時には後光が差していると感じるほどに存在自体がキラキラして見えたのです。
キラキラの正体とは?
キラキラの正体とは?と考えたときに、私の脳内で流れたのは、今や大御所のMr.Childrenがまだ期待の新人だった頃の曲『虹の彼方へ』(1994)。とある絵本で、様々な涙のあとに見上げた空には虹という展開があったのも一緒に浮び、「キラキラの正体は雨上がりの虹か!」と。
「過去から現在」「現在から未来」駐妻の輝きを支えるもの
そのキラキラを支える要素としては、色々な挫折や困難があっても前に進んできたという「過去から現在」に関するものの他に、今の生活の中で前を向いて頑張っているという「現在から未来」に関するものも感じました。特に、帯同開始後に気分が落ち込んだあとの回復のきっかけとして、何かを始めたことで「友達/居場所/楽しみができた」、目標ができて「日々が充実するようになった」というお話が多かったことから、今回はその具体的な内容(仕事・ボランティア・勉強・趣味等)についてご紹介したいと思います。
タイ就労のハードルがある中「働く駐妻」
時々、別の国の駐妻さん界隈あたりから、「働きたいなら働けばいい」という話が流れてくるのをX(旧Twitter)で見かけますが、私がバンコクでリクルーティング業界にも携わっていた経験からすると、駐妻さん側の経歴や能力に申し分がなくても、業務内容や待遇的に希望に叶う案件がタイムリーにあるかというと、期待は難しく、やはりまだまだ駐妻さんのタイでの就労は簡単な話ではありません。
また、それ以前に大半の方が「夫の会社に禁止されている」と仰るのが2025年のタイ駐妻を取り巻く現実。中には「就労自体は明示的に禁止とは言われていないものの、私がタイで働くと、私に関する福利厚生だけでなく子供に関するものまでカットされてしまって世帯収入的には完全にマイナス」という方や、「夫の会社からは家族手当も途中で交渉するまでなかったのに、就労禁止ということだけははっきり言われていた」という方も。
回を重ねながら、今どきの駐妻さんは仕事にも長年の経験や専門性を持っている方が多く、タイ帯同を始めてからその喪失感が大きいというお話をしてきました。それを埋めようと、タイでの就職に関心を寄せる方も少なくなく、只今準備中という方も数人いらっしゃいました。私がお会いした現地採用で就労中のお二人は、バンコクで働きながら充実した毎日を送っている様子を聞かせてくださり、伺っている私もワクワクしたほどですので、その存在はタイ就職に関心を持つ駐妻さんにとって希望の光となりえるでしょう。
しかし、そのお二人が実際に就労に踏み切れた背景には、ご本人たちの能力の高さが引き寄せて納得できる案件に巡り合えたこともありますが、やはり旦那様の会社が配偶者の就労を禁止せず、なおかつ、旦那様が駐在している限り住居をはじめとする各種手当のカットがなく、変わったのがビザと保険だけだったというのは、抜いて語れないポイントです。
駐在員配偶者の就労をめぐる企業側への提言
この点、駐在員を抱えている企業の関係者は、横並び、あるいは前例踏襲で盲目的に駐在員配偶者の就労を禁止していないか、禁止や手当の設計・支給/取りやめ基準に妥当性があるのかの検討が必要と思われます。タイの場合、治安や交通インフラの問題もあり、お子さんがいらっしゃる駐妻/駐夫さんの場合は特に、最終的に仕事よりも家族との時間を選ぶ方も少なくないと思われますし、中には、就労しなくてもいいように十分な手当を出している、という企業もあるかもしれません。しかし、働いて能力を発揮し経済力を備える女性が少なくない令和において、生涯で捉えて配偶者のキャリア断絶に果たして本当に責任を負いきれるのか、帯同家族のロイヤルティや企業イメージといった観点で「選択の自由を与えない会社」になってしまっていいのか、仕事がもたらす生活保障以外の側面や従業員の転勤忌避の理由の一つとして家族のキャリアが大きくなってきていること等も念頭に、特定対象者の問題ではなく現在活動している企業の姿勢として真摯に向き合うことが大事です。
新たな制度と選択肢の広がり
また、ご自身の日本のお勤め先のバンコク拠点で労働許可を取得したという方は、自社でその制度ができて利用第一号ということでしたが、こういう選択肢が増えることが、その当事者だけでなく、日系ビジネス環境全体にとっても資するところが大きいように感じます。
休職制度を利用している人の中でもタイでの就労に関心を寄せる人は少なくなかったのですが、「夫の会社はOKでも自分の会社が副業禁止」、「夫の会社は許してくれているが夫が許してくれない」等で、今回お会いした100人の中には休職中に現地採用で就労しているという方はいらっしゃいませんでした(但し、インタビュー外にはなりますが、知人が現法MDをしていた会社の駐在員の奥様<社内結婚で同社社員>の方が、配偶者の会社としてもOKで、自身の会社としても副業OKということで、休職中の駐妻で現地採用という例があった由)。
「働けないなら別の道を」——創作や挑戦で輝く人たち
その他、滞在資格と税務処理で問題にならない術を考えたとして、バンコクにいながらできる創作活動をして日本の賞金付き懸賞に入選した方や、著名な作家に弟子入りをして経験を積んでいる方もいらしたのがあっぱれ。ディズニー映画『モアナ2』で主人公が窮地に陥っても“There’s always another way.”と諦めずに状況を打開する道を見つけた様子と重なりました。
多種多様なボランティア活動
「仕事ができない代わりに」「家族優先の生活をしながらできることとして」「組織の一員として動く感覚を持ちたい」「新しい学びのために」「誰かの役に立ちたい」「経験を活かして何かしたい」等としてボランティアに従事していた/している/してみたいという方が結構いらっしゃいました。インタビューの中で名前の挙がったボランティア活動は以下のとおりで、タイでのオンサイトのものに限らず、オンラインで日本の活動を支援したり、世界の他拠点にいる駐妻さんと繋がったり、というリモート参加の広がりも見られました(注:①過去に従事していたものや興味があるものが含まれるため、インタビュー時点やコラム掲載時点でインタビュイーが以下の活動に参加しているとは限りません。②また、最新の募集・活動状況などについてご関心のある方は、各連絡先に直接お問い合わせ願います)。
○文化系
・バンコク国立博物館 毎週水・木曜日の9:30-11:30に日本語によるガイド実施。仏陀の生涯を描いた壁画・宗教美術品・王家の葬儀・伝統工芸品等を案内。
・ジム•トンプソンの家 チーク材を用いたタイの伝統的な建築や古美術コレクションを日本語ネイティブがガイド。毎週火曜日午前中のスタンバイの他、DM経由で個別ガイドも応相談。
・バンコク子ども図書館 日本人会別館で、カウンター当番と、総務・図書管理・企画等グループに分かれての活動。大人用図書館でもボランティアによる運営あり。
○交流系
・Coffee Chatt 予約不要の気軽なお茶会やイベントの企画・運営。
・ホームステイプログラム ルアムジャイ 日本語を学ぶタイの高校生とタイで生活する日本人による活動。ホームステイ受け入れ及び事務局。
・虹の学校 カンチャナブリ県にある山岳民族の子供たち向けオルタナティブ教育学習センターでの授業補助、子供たちと遊ぶ、農業、各プロジェクト・アクティビティの補助等。
○寄り添い系
・バンコクこころの電話 タイ在住日本人のための電話相談を主な活動とする団体。日・月・火曜日の10-16時。02-392-2680。
・みんなの相談室 日本人会厚生部所属で「相談」と「お茶会」2つの活動を実施。相談は、日本の臨床心理士、公認心理師、看護師、産業カウンセラー等の有資格者が対応。
○育児系
・BAMBI(バンコク・マザーズ&ベイビーズ・インターナショナル) バンコク在住のあらゆる国籍の妊婦と幼い子どもを持つ親に、サポートと寄り添いの場を提供。
・出産準備教室 日本人会別館で開催のタイで出産・育児をされる方、そのパートナーの方に向けてのサポート。
・すくすく会 日本人会別館で活動している子育て支援。出産・産後の悩みや不安解消、その他、乳幼児・未就学児を対象としたイベントも随時開催。
・基本のキ バンコクでの発達障害児支援。月1茶話会開催。子供の発達や子育ての悩み相談・情報交換。臨床心理士、保育士、看護師、発達障害児を育てるママ在籍。
・X Change 各家庭に眠る不用品の物々交換イベント企画・開催。残った品はリサイクルショップで換金し、タイ国内の慈善団体へ全額寄付。
○キャリア・情報系
・駐在ファミリーカフェ 駐在家族の「知りたい」にこたえる情報サイト運営・コラム執筆等。
・キャリアマーク 駐在員パートナーのキャリア支援を行う会社でのSNS発信・ブログ等担当。
・ママボノ 育休中や離職中の子育て女性たちが、仕事復帰に向けたウォーミングアップと同時に社会貢献活動を行える場。
・タイハーブストーリーズ 天然100%タイ製ハーブを使用したアロマブランドのアンバサダー 活動等。
ボランティアがもたらす“居場所”と“つながり”
実際に従事している方たちは、その活動のやりがいや楽しさ、またそこでかけがえのない友達や仲間に出会え、居場所にもなっているというお話をしてくださいました。また、関係するボランティアグループの何十年という伝統や設立の経緯を伺って、目の前の駐妻さんたちだけでなく、その先輩にあたる過去の駐妻さんたちに尊敬の念を深めることも度々ありました。人によっては、ボランティアが、就労が難しいがための次善の策ということもあるでしょうが、運営側で活動する方たちに限らず、ビジターとして参加・利用される方たちにとっても貴重な場・存在であり、多種多様なボランティアがあることは帯同生活を送る上での好条件の一つとも感じました。
ボランティアも“禁止”?——過剰な制限への懸念
しかしながら、ここで驚いたことがありました。「就労のみならずボランティアも夫の会社に禁止されている」という方が複数いらっしゃったのです。コンドミニアム内でのお誕生日会でとある技能を提供した奥様が、後日旦那様の会社に呼び出されて「第三者から不法と疑われる行為は一切しないように」注意されたというお話もありました。確かに、タイには「ボランティアビザ」というものがありますので、滞在目的がボランティアであればその活動のために専用のビザを取得することが求められます。しかし、駐妻さんの場合、帯同が滞在の目的で、その生活の余暇の範囲内でボランティアをしているだけで、常識的に考えて、一律禁止は如何なものかと。件のお誕生日会での話に至っては、「対価を受け取っていない」という意味で「ボランティア」という言葉が使われたにせよ、事実確認をすれば、それがただの「ご近所づきあい」に過ぎないことは分かるはずです。この点、企業側関係者におかれては、ボランティアの制限が実際にある場合、むやみな事なかれ主義によってそうなっていないか点検していただきたいものです。
勉強:楽しみからキャリアまで
語学学習:タイ語が人気No.1
企業によっては、現地語=タイにおいてはタイ語のみが語学学習費用支援の対象になっている、という事情も多少影響しているかと思いますが、語学に関しては「タイ語」を勉強していると挙げた方が20人で「英語」を挙げた10人より多い結果となりました。一方、「普段タイ語と英語のどちらを使っていますか?」という質問には、「どちらもできません」「ずっと日本語と指さしで通しています」という方も少なくなく。実際バンコクは日本語サービスの充実とタイの人の察する力とよきに計らってくれる姿勢に助けられて、語学ができなくても死活問題にはなりにくいので、余裕がない場合、無理に「勉強しなきゃ」とストレスを抱えることもないと思います。しかし、勉強されている方たちからは、「学校以外でも通じると楽しい」「興味を持ったものの名前を聞いたり、ちょっとしたことを教えてもらったりできてタイの解像度が上がった」「文字が楽しい」「タイでの推し活がより充実」「タイ就職のために」「日本の地元のお店にタイ人のアルバイトさんが多いところがあって、帰ってもそこでパートしたらタイ語で話せて楽しそう」など、夢膨らむお話がたくさん聞かれましたので、余裕があれば試してみるのもいいかと思います。
資格・履歴書に書ける学び
キャリア志向の方が多かったからか、帰国後の再就職に役立つ資格や「履歴書に書けるもの」という表現も結構聞かれました。英語ではTOEIC、タイ語ではタイ語検定とチュラロンコン大学のインテンシブタイ(ITP)、そして日本語教師養成講座に複数人ずつ言及がありました。また、元々のお仕事に関連して、帯同開始後に、簿記・通関士・社会保険労務士・中小企業診断士等の勉強をしていた/しているという方や、バンコクでMBA、日本や他の国の通信制で大学の課程履修中という方も。あとは、目的はキャリアに結び付けた方に限らず様々でしたが、パーソナルカラー診断も複数の方が既に勉強したり検定を受けたりされていました。中には、参加できるものならオンラインも含めてコーチングでもアロマでも何でも手あたり次第「学び散らかした」と自ら仰る方もいらっしゃいました。
習い事・サークル・趣味の広がり
タイらしいものとしては12人が「ムエタイ」を挙げて人気1位で、「タイ料理(7人)」がそれに続きました。その他、タイ舞踊・タイマッサージ・ルーシーダットン(タイ式ヨガ)・ハーバルボール作りに最近の流行として単発セミナー/イベントでの「ヤードム作り」への言及も複数ずつありました。
身体を動かすものでは、日本人会の各種同好会の他、ゴルフ・ピックルボール・卓球・テニス・バドミントン・サッカー・フットサル・水泳・パーソナルトレーナー・ヨガ・ズンバ・ピラティス・フラダンス・バレエ・チア―・キックボクシングが挙がりました。大型コンドミニアムでは、入居者Lineで募集・調整してインストラクターを招き、ご近所さんと一緒に参加ということも活発に行われているようです。
手芸系は、タイ地図刺繍・ハーダンガー刺繍・クロスステッチ・マクラメのほか、ミシンでの服や小物づくりと絡めて材料購入で中華街ヤワラート界隈の問屋散策や布沼話にも花が咲きました。また、タフティングが日本よりバンコクでする方が安く手軽にできると教えて下さる方もいらっしゃいました。
音楽系は、楽器を持って来ていなくてもバンコクでレンタルできることもあり、帯同になって再開したというお声がちらほら。日本人会内外で、バンドやアンサンブルといったグループ活動に、専用練習室を借りての心行くまでの一人練習、またボイストレーニングに、一人/友達・家族とのカラオケまで楽しみ方も色々。
日本文化系では、バンコクでも着付・お茶・生け花・写経・写仏・短歌をしているという方たちがいらっしゃいました。
その他、気軽にできる趣味・気分転換として、カフェ巡り・お酒・BTS/バスの旅・パン作り・料理・カメラ・K-pop・漫画喫茶・ブログ・note・SNS・ネトフリ・読書・JTCやパーククローン花市場でのバンコク満喫お買い物等が挙がりました
結び:キラキラの本質は「楽しさ」と「多様性」
以上、いかがでしたでしょうか? 「帯同生活」については「んー」と考え込む人が少なくなくても、「タイ生活」については97%が「楽しい」と答え、しかも即答が多かった所以は、バンコクでの選択肢の多さや、それによって自分に合う人や楽しみを見つけやすいということもあるような気がします。
<本記事はチャオプラヤー・タイムズ 「南洋茶話2ndシーズン」第12回を許可を得て引用・転載しております。>
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