2025.11.25タイ生活

タイ駐妻100人インタ⑨ 残ったのは「夫大事」と「友達大事」

私はこのシリーズで色々書いてきましたが、もし駐妻さんに関して一言だけ言うなら、「夫大事。そして、友達も大事」です。

「駐妻とは?」と改めて考えた際、「『家族で一緒にいることを選んだ人たち』位しかないのでは」と書きましたが、そこを「家族で」とするか「夫と」とするか悩んだほどに、インタビューを重ねるごとに駐妻さんにとっての「夫」の存在感が増しました。そして、駐在員という特殊なステイタスゆえ、いつも頼れるとは限らず他の支柱の大事さが増すということか、「友達」も帯同生活を左右する大きなカギと感じました。

駐妻にとっての「居場所」

「家族・家庭」という居場所

「今のあなたの居場所」で一番多かった回答が「家・家族・家庭」(計69人)でした。「夫婦で互いに必要とし合っている」「ホッとできる場所」「家族と仲が良く、話し合える」「夫の隣が一番安心」「家族を見送り迎えられる場所」等とそこで共に暮らす家族との関係の良さやご自身の役割への誇りが窺えるエピソードは微笑ましいものでした。

しかし、家が快適で家族との関係が良い分にはいいものの、住居でトラブルが起きたり、家族との間に軋轢が生じたりした場合に他の居場所がないと、その辛さにも苛まれます。この点、①上記のうち45人はその他の居場所への言及がなかったこと、②以前一度ご紹介しましたが、「夫に『出て行け』と言われても駐妻に行く所なんてないので、死のうと思った」という声があったこと、③帯同を機に約6割の方が「職場」という居場所を失っていることを心に留めておきたいものです。

「友達・仲間」という支柱

続いて「友達・仲間」を指す回答が27人。「気の合うママ友」「気心知れたご近所さん」「ボランティア仲間」「相談できる友人」「同じ趣味の友達」等表現は様々でしたが、そんな存在の大切さはまさに支柱と感じるものばかり。「マヨンチットの季節は送別会の時期。旬が巡ってくると友達との別れを思い出してしんみりしてしまう」「ここでできた友達といつか離れると思うと今から泣ける」「体調不良で寝込んだ時に友達が持って来てくれたスープとその優しさが沁みた」「タイで困った時には夫より友達の方が頼りになる」「ボランティア仲間の素晴らしさに感動して泣いた」「日本で出会えなかった人たちと親しくなれたことが宝」「いい年だけど、バンコクで一生ものの友達ができた」「帯同生活に色々思うところがある中、分かり合える友達は戦友で、一緒に頑張ろうという気にさせてくれる」等というエピソードはどれも印象深いものでした。

その他の“居場所”

その他の居場所として、「バンコク」「タイ」「日本」「日本とタイ」「学校」「職場」「ボランティア」「ゴルフ場」「公園」「ジム」「カフェ」「Zoom」「赤バス」「エムクオ(※バンコクの有名ショッピングセンター、エムクオーティエの略)」「スクンビット」「バレエの稽古場」「ムエタイ」「スポーツサークル」「音楽」「本」「猫」「ソファー」「どこでも」「自分」等が挙がりました。

駐妻から見た夫

ご夫婦が出会ったきっかけは、同じ大学13%、同じ職場25%、小/中/高・趣味・バイト・外国繋がり等23%、その他合コン・飲み会・コンパ・紹介・マッチングアプリ等39%。大雑把な表現になりますが、インタビュイーの半数以上は、仲間・同僚・友達等という形でご夫婦の元々の立ち位置が並んでいたと見受けました。また、インタビュイー及びその配偶者の年齢は、家庭科共修世代/アラフォー以下が8割以上を占め、仕事も家のこともお互いにするのが当たり前になってきている、ということもひしひしと感じました。この点、内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和6年9月調査)で「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という性別役割分担に対する「反対」が全体の約3分の2を占め、若い世代になればなるほどその割合が高かったことと重なります。それだけに、駐在・帯同によって、夫婦の関係性や分担に大きな変化が生まれることに妻が戸惑い、大きなストレスや不安を抱くのも、現代の構図的に多分に起こりえることかと。手を携えて共に歩んできて、タイに来てからも夫は前に進んでいるのに自分は取り残されてしまったような感覚……。中には、「夫の稼ぎで十分なら、自分が働かなくても夫が家にいなくてもいい」という方や「暫し仕事を忘れて育児に専念できるしタイ自体も最高」という方もいたので、100人全員の意見ではありませんが、少なくない方たちが、夫婦のあり方の変化や自身の停滞感にやり場のない気持ちを抱えていました。

駐在員である夫にできること

駐妻さんに、旦那様が家族と過ごす時間について尋ねたところ、「十分ではない」が6割以上。やはりお忙しい方が多いですね。以下では、時間の融通が利くとは限らない駐在員が帯同配偶者に対してできることについて、例示します。

話せる雰囲気づくり

配偶者が仕事をしに来ていることや、仕事の大変さ等は皆さん分かっています。それゆえ、迷惑をかけたくないからと悩みや辛いことを打ち明けられないという方も複数。また、意を決して話そうとしたところ「今日は疲れてる」「俺の方が大変」等と返されて何も言えなくなったという方たちも。そんなことを念頭に置くと、普段から何でも話せる雰囲気を作ることと、話しかけられた時にはしっかり耳を傾けることが大事です。駐在・帯同にあたり、最初に夫婦で帯同者が孤独に陥りやすい状況と互いの存在の大切さを確認しておくことも有益です。

ポジティブなメッセージ

「夫からポジティブな言葉がある、または、言葉がなくても大事にされているのが分かる」と仰る奥様たちは、明らかにそうではない方たちと比べて帯同生活が「楽しい」と感じる割合が2割程多い結果 (前者62%、後者43%)となりました。

感謝の言葉と伝え方

「励みになる配偶者からの言葉」で一番多かったのは「ありがとう」です。シンプルにそれだけでも相手を支える効果が一定程度ありますが、「いつも子供たちのことを」「今日も無事に過ごしてくれて」「海外に一緒に来てくれて」「サポートしてくれて」「ご飯作ってくれて」等、感謝の対象となる行動を具体的に示して伝えるとより効果的です。「おかげで仕事に集中できる/頑張れる」「助かる」「お疲れ様」等もいいですね。

しかし、中には「よく『ありがとう』とは言われるものの、私が望んでいるのは夫が子供たちのことにもっと関心を持って実際に子供たちと関わること。それがないまま感謝を口にされても響かない」という声もあったので、言いさえすればいいというわけでもない点、ご注意を。

評価・応援・尊重の言葉

料理に関しては、努力したり意識したりしている方が少なくなく、「おいしい」と口にする効力の大きさを感じました。仕事をしていないと評価される機会が本当に乏しくなりますので、喜びもひとしおかと。

その他、「頑張っているね」「いいね」「えらい」「すごい」「楽しそう」等、試みを肯定的に捉える言葉も「夫は私のことを見て、応援してくれている」という信頼や自信に繋がります。

行動で示すサポート

助けを求められたり異変を感じたなら、帰りを早めたり、避けられる出張・ゴルフ・会食等は避けて何か具体的に助けたりすることが必要です。特に、来タイから3か月頃までの時期、産後、乳幼児育児、連続ワンオペ、自身や子供の体調不良、住居や子供に関係するトラブル等がある場合は要注意です。「日本にいたときは共働きで何でも一緒にしていたのに、タイに来てから夫は家事育児の一切をしなくなった」「体調が悪すぎて病院に行けなかった日、幼い子供の世話だけは何とかしていたものの、夫は帰宅一番、私にお構いなく『俺の飯は?』で……」と思い出して涙を流す方もいました。その一方で、普段どれだけ忙しくしていたり家事育児への参加が少なかったりしても大事な時にはアクションをとる配偶者について話す人には信頼と精神的な安定が見られました。この点、駐在員本人だけでなく、会社や上司・同僚等も、上述の要注意要素を抱えるご家族がいるメンバーについては配慮したいものです。

避けた方がいいこと

理詰め・論破

ただ聞いてもらいたいだけなのに、理詰めで返されたり、夫が論破しようとしたりするので「疲れる」「悲しくなる」「みじめな気分になる」等という声が多く聞かれました。この類の話は、理系やとても論理的な奥様たちからも出ましたので、理屈ではない話がある、ということをまずご理解いただく事が必要かもしれません。

この点、妻側も「これはただ聞いて欲しいだけなんだけど」と話を切り出す際に伝えたり、夫側も自分がとるべき対応が傾聴徹底なのかソリューションやアドバイスの提示なのか不確かであれば、素直に聞いてみたりしてもいいかと思います。

謝らないこと

「夫は『ごめん』と言わない」という声が複数聞かれました。仕事でもしていたら気持ちの切り替えもしやすいものですが、それがない環境だとどうしても負の感情が尾をひきがち。特に、喧嘩して泣かせたのに謝らないなんてことは、二重に相手を傷つけますし、配偶者の存在が大きい分、相手のメンタルへの影響が大きいことはお忘れなく。

容姿いじり

「きれい」「かわいい」「新しい髪型もいいね」「その服よく似合ってる」等、見た目を褒めてくれるのが嬉しい、という声があった一方で、容姿をいじられて「悲しい」「泣いた」「ストレス」という声も結構ありました。悪意はないにせよ、相手が傷つくなら、やはりそれは言うべきではないことです。

家事・育児への不理解

「夫は『専業主婦は楽』と思っていて、一日中子供と一緒にいる大変さを分かってくれない。週末に子供を任せても、夫は2~3時間お菓子と動画を好きなだけ与えて、スマホをいじってばかり。せめて、『お疲れ様』なり『ありがとう』なりあったら……」という声を聞くと、感謝や労いがないのはかなり哀しく感じます。

また、小さなお子さんがいたり、妊娠中・体調不良だったりする場合、一日中家に居たとて何一つままならないことも多分にあり得ます。そんな状況にあるだけで辛いのに、その上に家事や育児を指摘されると、なお辛くなります。何か目につくのであれば、疲労や体調の心配・労わりから始めて、ご自身が直接サポートするなり、アウトソースの利用や何らかの対応をすべき状況にあるかもしれないということを是非考えるなりしてみてください。

インタビュイーの工夫と夫婦関係の工夫例

・平日昼休みのさくっとランチデート

・お子さんをあやさんに任せての夫婦水入らず時間

・夫婦でプール・サウナ(携帯やパソコンを手にしないでじっくり会話に集中できる)

・記念日や誕生日のカード贈り合い(その間の振り返りと感謝の伝え合い)を定例化

・(夜は残業や会食で難しいので朝)一緒に散歩

・夫婦/家族で共通の趣味

・夫婦のお小遣いを同額で設定

・夫婦別室→夫婦で会話する機会減少→再び同室に

・飲み会/接待はなるべく自宅近くで設定し、行く前に一度帰宅して夫婦/家族時間

・家でできる仕事は持ち帰り、子供のお風呂・寝かしつけをしてから、再開

友達づくりのヒント

お子さんの学校や住居繋がり以外だと、SNSで年齢や感覚・家族構成が近い方のフォローから始めて友達を作る方が多いです。また、前回ご紹介した、ボランティアや習い事等も関心事が近い方と会いやすいです。会ってみて相性が今一でもお互い様で、それほど気にしなくてもいいかと。友達らしい友達ができたのは2年目という方も結構いらっしゃいましたし、合わない人に無理に会ったり合わせたりする必要もないので、早く友達を作らなきゃ、とストレスに感じることもないですが、気になる人がいたら是非声をかけてみてください。

結び:「夫と友達」——2つの支柱が帯同生活を支える

外国に住むことで、異文化を意識すると思いますが、バンコクの駐妻界隈だと、対タイ人・その他外国人だけでなく、自分とは違う地域・環境出身の日本人との文化の違いへの理解も大事です。100人インタビューでは、エリア的には北海道から沖縄まで全地方、32都道府県ご出身の駐妻さんとお会いしました。その結果、コミュニケーションの取り方や各種感覚には、同じ日本から来た者同士でも、個人差も地域差もあると感じました。例えば、エレベーターやムーブミー(※アプリで呼べる電動トゥクトゥク配車サービス)等で見知らぬ人に挨拶をするしない、または初対面でどこまで個人的な話をするか、もまちまちです。期待する反応が返ってこなければ、心穏やかでいられないことも多々ありえますし、特に来タイ後間もない不安な時期だと心の波風も大きくなりがちですが、そこは日本人同士でも文化の違いがある、と認識することで、少しは気楽になると思います。「極力日本人を避ける」という方もいましたが、バンコクでは日本人と会うという観点でも貴重な機会が豊富ですので、私としては、皆さんに素敵な出会い・ご縁があることをお祈りしています。
<本記事はチャオプラヤー・タイムズ 「南洋茶話2ndシーズン」第13回を許可を得て引用・転載しております。>

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タイでの人材紹介に必要な許認可手続き

タイで人材紹介業を行うには、労働省の認可を受ける必要があります。事業者は許可申請や更新に関する正式な手続きに従い、法令に基づいた運営を行わなければなりません。許認可の手続きについてはこちら労働法の詳細はこちらをご参照ください。

パーソネルコンサルタントのサービス概要について

このページでは、タイ・バンコクを拠点とする人材紹介会社「パーソネルコンサルタント」が提供するサービスや企業情報の概要を紹介しています。

主なサービス内容

  • タイ国内での人材紹介(日本人・タイ人)
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