第4回:タイ人が企業に求めるもの — 昇給率・ボーナス・“働く理由”
これまでの「タイ人材の給与を理解するシリーズ」では、
第2回でバックオフィス職種(経理・管理部門・日本語人材)の給与水準とキャリア動向を、
第3回で営業・IT・エンジニア職の相場とキャリア動向を解説してきました。
本稿・第4回では、給与額そのものだけでなく、タイ人が企業に何を求め、何に魅力を感じて働くのかという観点から、「昇給率」「ボーナス」「働く動機」について解説します。
■ 給与だけではつなぎとめられない時代に
タイ人にとって給与は依然として最も重要な要素ですが、「どれだけ昇給するか」「ボーナスがどの程度あるか」に加え、近年は「働きやすさ」や「成長できる環境」も企業選びの決め手となっています。
■ タイ日系企業の昇給率
2024年度の調査によると、昇給率の中央値は3.6%。製造業・非製造業ともに同水準でした。
分布をみると、製造業では「3.1〜5.0%」が全体の約65%を占め、非製造業でも同様に3〜5%前後が中心となっています。
2025年度の見込みでも中央値は3.6%とほぼ横ばいで、タイ全体で安定した昇給傾向が続いています。
■ タイ日系企業のボーナス
2024年度のボーナス支給実績を見ると、製造業では平均2.5か月・中央値2.6か月、非製造業では平均2.2か月・中央値2.6か月でした。
最も多い支給レンジは「2.1〜3か月」で、約45%前後の企業がこの水準となっています。
ボーナスは、個人の成績と連動させる企業も多く、年功よりも貢献度を重視する傾向が見られます。
■ タイ人が職場に求めるもの:安心・成長・人間関係
給与、昇給、ボーナスと並んで重視されるのが、職場環境に対する安心感です。多くのタイ人が企業に求めるのは次の3点に集約されます。
安心感 — 会社の安定性、上司との信頼関係、長く働ける雰囲気。
会社の安定性や上司との信頼関係が、最も基盤となる要素です。「長く働ける」「突然の解雇や配置転換がない」「上司がきちんと話を聞いてくれる」そうした安心感があると、社員は会社への帰属意識を持ちやすくなります。
成長機会(Career Growth) — 自分のスキルを伸ばせる環境、昇進や異動のチャンス。
給与だけでなく、「この会社でどんなスキルを伸ばせるか」を重視する傾向が、若い世代を中心に年々強まっています。
実際、幹部人材を育成する研修制度やジョブローテーションを積極的に取り入れている企業なども見られるようになりました。
人間関係(Work Atmosphere) — チームの雰囲気、上司のコミュニケーション、ワークライフバランス。
タイ人が「良い会社」と感じる最大の要素が、人間関係の良さです。上司が親しみやすく、チーム内で助け合える雰囲気があると、社員は安心して意見を出し合い、仕事への前向きさを保てます。「ありがとう」「頑張ったね」といった言葉を日常的に伝える上司は信頼を得やすく、こうした小さな承認や対話の積み重ねが組織の一体感を生みます。
また、仕事と私生活のバランスを大切にする文化から、残業が少なく、家庭や趣味の時間を尊重する職場が特に好まれます。給与が多少低くても、「上司が信頼できる」「自分を理解してくれる」と感じられる職場では離職率が低い傾向にあります。
■ パーソネルコンサルタント独自調査:在タイ日系企業給与・福利厚生データ
弊社では毎年、在タイ日系企業各社のご協力を得て、給与・福利厚生に関する独自調査を実施しています。
本コラムでは2024年のデータをもとに解説していますが、2025年の最新データおよび過去データ(2024年以前)は、弊社資料ダウンロードページより必要情報をご入力のうえダウンロードいただけます。
本コラムが貴社のタイ人採用のご参考になれば幸いです。
👉 第2回:業種別で見るタイ人給与相場とキャリア動向①(バックオフィス編)
