2025.12.17

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タイ人材の給与を理解するシリーズ第1回:タイ人の給与構造と市場の基本理解

タイ人の平均給与 タイの人件費は本当に「安い」のか?

タイ人の給与水準は「日本よりも低い」という漠然としたイメージを持つ方が多いかもしれません。実際の水準はどうなっているのでしょうか。2024年の日本の平均給与330,400円(約71,366バーツ:1円 ≒ 0.216バーツ換算)【参考:厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査】と比較すると、タイ国民の平均給与は約97,443円(21,046.20バーツ:1バーツ ≒ 4.63円換算)【参考:タイ中央銀行(BOT)の統計 2024年1-12月の平均月収の平均値)であり、平均月収は日本のほうが約3.3倍高いということになります。

しかし、この「平均」とは農村部を含めた全体の水準であり、都市部、特に首都のバンコクで働くホワイトカラーの水準はタイ全体の平均給与の水準で考えてしまうと大きなギャップがあります。タイの農業従事者の2024年12月の平均月収が9,387.45バーツであることに比べ、非農業従事者の平均月収は19,951.39バーツとなっています。さらに、2025年7月に発表されたドイツ銀行の調査によるとバンコクの平均月収は28,600バーツであるという調査もあります。

さらに、タイは世界でも有数の貧富の格差が大きい社会であり、2021年時点で、タイの上位10%の富裕層が国内の個人純所得の48.8%を占めているというデータもあります。【参考:世界銀行2023年調査レポートBridging the Gap: Inequality and Jobs in Thailand

このため、タイ国全体の平均水準を基に市場や給与を設定することはできません。また、職種による差も非常に大きく、給与を正しく理解するには「同地域・同業界」での比較、つまり同業他社の水準を把握することが不可欠です。

■タイの一般的な給与構成

多くの企業では「固定給+手当+賞与」という構成が基本ですが、日本と異なるのは手当の比率が高い点です。
たとえば、日本語や中国語など、英語以外の言語スキルに対する語学手当や資格手当が重視され、場合によっては給与全体の2〜3割を占めることもあります(日本では1割未満が一般的)。これは、スキルを持たない一般社員と給与を差別化をするために行われることが多いです。
また、賞与に加えて年次昇給制度が設けられており、これは多くのタイ企業に共通する仕組みです。

※福利厚生については以下のコラムを参照ください

【タイ進出企業向け】タイの福利厚生について
タイのプロビデンドファンドとは?導入のメリット・デメリット

■在タイ日系企業の給与制度の特徴と課題

日系企業の多くは、本社の制度を踏襲した年功序列型の給与体系を採用しています。勤続年数や年次を重視する傾向が強く、短期間で成果を上げても昇給・昇格に反映されにくいのが実情です。特に、日系企業がタイに進出し始めた70-80年代から事業を開始している会社にその傾向が強いです。

一方、外資系やタイ系企業では成果連動型の仕組みが明確で、昇給率も高い傾向があります。そのため、優秀なタイ人ほど「もっと早く評価されたい」と考え、日系企業からタイ系、外資系企業への転職を選ぶケースが目立ちます。

関連コラム:在タイ日系企業のタイ人採用の難しさ ~近年の内定受諾率低下と内定辞退防止策について~

■在タイ日系企業で働くタイ人の給与相場を知る:パーソネルコンサルタントの在タイ日系企業給与・福利厚生調査データ

弊社では毎年、日系企業を中心に給与・福利厚生に関する独自調査を実施しています。
本コラムでは2024年の調査データをもとに解説していますが、2025年版の最新データ、または過去データ(2024年以前)については、専用ページから必要情報を入力のうえダウンロードいただけます。
貴社の給与水準の見直しや新規採用時の判断材料として、ぜひご活用ください。

■まとめ:タイの日系企業で働く日本人が知っておきたい、タイの給与構造と市場

タイは地域間・業種間の格差が大きく、同じ職種でも求めるスキルによって相場が大きく変動します。
採用や昇給を検討する際は、自社が求める人材スペックが市場でどの給与帯に位置しているのかを正確に把握することが重要です。

シリーズ

👉 第2回:業種別で見る給与相場とキャリア動向①(バックオフィス編)

👉 第3回:業種別で見る給与相場とキャリア動向②(営業・IT・エンジニア編)

👉第4回:タイ人が企業に求めるもの — 昇給率・ボーナス・“働く理由”

 

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