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2026.01.16企業マネジメント「語学」教育の権威が示すコミュニケーション“戦略”
海外での仕事で「外国語」、あるいは「母語/第一言語を異にする人との会話」は避けて通れないものですが、皆さんはその点自信がありますか? 日々の職場・現場で、コミュニケーションは円滑ですか? 日系企業のタイ駐在では、事前に語学学習に十分な時間が割かれるケースよりも、いきなり勤務開始となるケースの方が多いように見受けます。「社内規定でTOEICの点数は駐在資格に達していたけれど、会話はあまり」「日本語のできるスタッフもいるけれど、日本語だけのコミュニケーションには限界が」「英語はできるけれど、来てみたら思っていた以上にタイ語の環境で」等といったお声もよく耳にします。そこで、今回は語学力を“戦略的”に補う術をご紹介したいと思います。 言語をまたぐコミュニケーションが成立するようにするためには、語彙や文法の学習だけでなく、“コミュニケーション・ストラテジー”についても学ぶ必要があると唱える学者は少なくありません。その中でも、例えば、言語学者タローンは、アメリカの名門州立大学ミネソタ大学の名誉教授で『The Modern Language Journal』という第二言語/外国語の学習教育に関する学術誌の編集委員も務める権威ですが、その具体的な戦略として次の5つを示しています。
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2026.01.08企業マネジメントタイ日系企業の人事制度で押さえるべきポイント 〜なぜ”日本式”の人事制度はタイで通用しないのか?
タイ拠点の日系企業の多くが、「賃金上昇」と「人材流出」という悩ましいテーマに向き合っています。 この記事では、過去10年以上タイ日系企業を支援してきたbeyond global Thailandが、単なる金額の問題ではなく、日本独自の人事制度と、タイの文化との間にある「小さなボタンの掛け違い」かもしれない、という視点を提供します。 無理に欧米式(ジョブ型)の人事制度にするのではなく、「役割(ミッション)等級」という新たな人事制度の考え方を取り入れることで、社員も会社も納得できる「ちょうどいい関係」が築ける理由についてお伝えします。
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2025.12.17企業マネジメントタイ人材の給与を理解するシリーズ第2回:業種別で見るタイ人給与相場とキャリア動向①(バックオフィス編)
前回の「第1回:タイ人の給与構造と市場の基本理解」では、タイ社会における所得格差の実態や、給与を判断する際には「同業他社・同業種との比較」が重要であることを解説しました。 今回はその続編として、企業の根幹を支えるバックオフィス職種(経理・財務・管理部門・日本語人材)に焦点を当て、給与相場とキャリア動向を見ていきます。
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2025.12.17企業マネジメントタイ人材の給与を理解するシリーズ第3回:業種別で見るタイ人給与相場とキャリア動向②(営業・IT・エンジニア編)
前回(第2回)では、バックオフィス職種を中心に給与相場とキャリア動向を紹介しました。 本稿では、日系企業でも採用ニーズの高い営業職・IT職・エンジニア職の3職種について解説します。 シリーズ 👉 第1回:タイ人の給与構造と市場の基本理解 👉 第2回:業種別で見る給与相場とキャリア動向①(バックオフィス編) 👉第4回:タイ人が企業に求めるもの — 昇給率・ボーナス・“働く理由”
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2025.11.23企業マネジメントタイ人材の給与を理解するシリーズ第4回:タイ人が企業に求めるもの — 昇給率・ボーナス・“働く理由”
これまでの「タイ人材の給与を理解するシリーズ」では、 第1回でタイの給与構造と市場相場の基本を、 第2回でバックオフィス職種(経理・管理部門・日本語人材)の給与水準とキャリア動向を、 第3回で営業・IT・エンジニア職の相場とキャリア動向を解説してきました。 本稿・第4回では、給与額そのものだけでなく、タイ人が企業に何を求め、何に魅力を感じて働くのかという観点から、「昇給率」「ボーナス」「働く動機」について解説します。
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2025.04.08企業マネジメント小中学校の教科書でも採用されている大谷翔平選手と目標達成シート
早いもので今年ももう四分の一が終わってしまいました。タイでは、12月末を決算月としている会社が多いですし、タイでは日本のように一斉に卒業・入学/入社というようなステージの変化を身近に見ることもなかなかないですが、それでも日本から来ているとやはり3月から4月にかけて、一つの区切り、そして新たな始まりと認識する感覚をお持ちの方が少なくないのではないでしょうか。 そんな中、もし年始やタイでの仕事開始時に目標について考える時間がなかった、という方がいらっしゃれば、今からでも考えてみてはいかがでしょうか? ソンクラーンも、言い換えてみればタイ正月ですし、気持ちを新たに進むべき方向を見直すのにいい時期かもしれません。 その方法は色々ありますが、今年もMLB開幕からスポーツニュースの華となっているドジャースの大谷翔平選手が高校時代に書いていたことで有名になった目標達成シートはいかがでしょうか? 人事や自己啓発、カウンセリング・コンサルティング界隈では大谷選手の活躍と共に広まって久しいこのシートは、下図のように9×9マスを使用し、一般社団法人マンダラチャート協会(https://mandalachart.jp/)による商標登録で「マンダラチャート」という名前でも知られています。夢をかなえるための努力・ストーリーと共にシートの作成方法は平成30年から日本の小学生用教科書で紹介され※1、今春からは中学生用の教科書でも採用されています。※2見聞きはしていても、実際に作ったことがある方はそれほど多くないかもしれませんので、ここにご紹介します。
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2025.03.31企業マネジメントタイ豆知識タイ人の微笑み13種類
MRTのSanam Chai駅を上がってすぐにあるサイアム博物館(Museum Siam) に行ったことはありますか? 日本語のオーディオガイドがあり、大人でも子供でも楽しめる仕掛けも多く、「タイらしさ」とは何かを様々な角度から考えさせてくれるユニークな博物館です。 その2階の展示室の中ほどには、棚にあるボックスに入ったゲームを取り出し、テーブルに広げて遊べるスペースがあります。そのテーマは、タイ人について語られるときによく挙げられるキーワードで分かれているのですが、その中には、うちわの取っ手のようなものに口元の表情をつけたものがありました。これは、タイがまだシャムと呼ばれていた頃に世に知られ始めた“Siamese Smile”タイ(人)の微笑みについて理解を深めるものです。(全部で13種類なのですが、1つどこを探してもなかったので↓下の写真は12種類のみ映っています。) コラム「語学力不足を補う秘訣とは?」では、伝達におけるボディーランゲージの割合の高さや非言語コミュニケーションの大事さについてお話ししましたが、お国変わればボディーランゲージも変わるもの。タイにおいては、同意の時には日本と同じように首は縦に振りますし、一見大きな違いがあるように見えませんが、笑顔については日本よりはるかに複雑多様なので、ここで確認してみましょう。
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2025.03.31企業マネジメント語学力不足を補う秘訣とは?
皆さんは業務上、英語とタイ語のどちらを使っていますか? 各々のミックスであったり、あるいは従業員の方ができるのであれば日本語だったりするかもしれませんね。母語を異とする人々とのコミュニケーションは得意ですか? 昔、母と中国の市場に行ったとき、ガイドブックで覚えたトラベル中国語で必死に話そうとしていた私を尻目に、母は日本語で話し続け、売り子さんは中国語で話し続けていたにもかかわらず、会話が成立し、互いに気分良さそうに売買も成立したのには、敗北感と共にえもいわれぬ感動も覚えました。タイでも、互いに相手の言語に長けているわけではなくても、身振り手振りで通じ合うという場面を割と目にしますが、皆さんはいかがでしょうか? そんなことを思うとき、1971年にアメリカの心理学者アルバート・メラビアンがその著書『Silent messages』※1(邦題:非言語コミュニケーション)※2に示した結論(いわゆる「メラビアンの法則」)が頭をよぎります。それは、次のような内容です。 ●人と人とが直接顔を合わせるコミュニケーションには基本的に「言語」、「声のトーン(聴覚)」、「ボディーランゲージ(視覚)」の3つの要素(3V)がある。 ●これらの要素が「矛盾した内容を送っている場合」、メッセージ伝達に占める各々の割合は以下のとおり。 ●メッセージを正しく伝達するためには、これら3つの要素が一致して相互補完する必要がある。 ●要素間に不一致や矛盾が発生した場合、受け手はコミュニケーションにおいて優勢な要素を受け入れる傾向がある。 ●つまり、言語そのもの(7%)よりも、非言語コミュニケーション(38%+55 %)が信用される。 「矛盾した内容を送っている場合」の実験では、「好意」と「反感」が織り交ぜられ、例えば、何かの失敗に対して「マイペンライ(大丈夫)」と言うのに、声のトーンが低く暗く、ボディーランゲージでは手を左右に振るのではなく仁王立ちの腕組みをしているなんてことが想定されます。そうなると、皆さんも、その本音は「大丈夫ではない」と解釈されるのではないでしょうか。
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2025.03.25企業マネジメントタイで考える「ライフイベント法」
昔、勤務時間中にタイ人の若いスタッフが突然声を上げて泣き出したことがあります。「どうしたの?」と尋ねると、「彼氏が浮気している」と。「どうして分かったの?」と訊いたら、「彼のメールを覗いていたら、証拠が見つかった」。「どうしてメールを見ることができたの?」の問いには「いくつかパスワードを試したら当たった」と言いながら、業務用PCの画面に映る浮気相手とのやり取りを示して彼が誰と何をしたかを赤裸々に説明し始め……。ひとまず彼女の気持ちが落ち着くことを優先させながらも、日本とタイの公私の区別に対する感覚の違いを思い知った場面でした。(そんな彼女も、今や某社で「ピー」と呼ばれながらバリバリとチームを率いています。浮気調査にも長けていましたが、仕事でも優れた集中力で成果を挙げてくれたものです。) さて、「24時間タタカエマスカ」※1が新語・流行語大賞の流行語部門銅賞に選ばれたのが、元号が平成に変わった1989年。その前年に発売された栄養ドリンクの企業戦士をイメージしたキャッチコピーだったところに昭和の残り香を感じます。平成に入ると、その反動か「ワークライフバランス」が注目されるようになり、令和の近年では「ライフ」主軸の概念も提唱されるようになっています。さはさりながら、海外出先となると、昨今の国際競争の激しさも加わり、24時間かどうかはさておき、365日に近い状況で戦っている方を結構お見受けします。 競合がある限り、あるいは本社から見た場合の予算配分の関係で、常に理想と現実の間に立つことになるのかもしれませんが、ご自身のためにも、部下の管理のためにも、やはり勤労者である以前に、一人一人が「ライフ」を抱えた「人」であるということは忘れてはいけないような気がします。 米国の精神科医Holmesらによって1967年に発表された「社会的再適応評価尺度」(ライフイベント法)※2は、下表のように、ライフイベントに得点をつけて、単体の事柄や重複した場合の合計のストレスの大小を見るスケールです。半世紀以上経過し、国を越えた場合には社会・文化背景の違いからそのままの適用が適切とは限らないこともありますが、それでも今日まで世界各国でストレス測定法として広く用いられています。日本では、日本人を対象にした後続研究でできた指標※3もあるものの、厚生労働省をはじめとする多くの行政機関でもいまだにHolmesらの研究成果はよく引用されています※4。
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2025.03.17企業マネジメント社内研修・セミナータイへの赴任時に気を付けること
今回は、パーソネルコンサルタントでもタイへの赴任前研修・赴任後研修「異文化から紐解くタイ人マネジメントの極意」の講師を務めていただいている山下先生に、タイへの赴任時に気を付けることを伺います。 ※本記事はYouTubeチャンネル【知って繋がるバンコクのビジネスチャンネル〈タイ前線〉】の投稿を基にしております。
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2025.03.10企業マネジメントタイ豆知識日本人経営者が対処したタイ大洪水~NHK新プロジェクトXに見る闘いと学び(2/2)
<日本人経営者が対処したタイ大洪水~NHK新プロジェクトXに見る闘いと学び(1/2)>の続きです。 未曽有の事態に大きな衝撃を受けても即座に結束して泰日両政府に働きかけ、無理と思われた「水没した工場の生産ラインを、重要機材とタイ人技術者約5千人をセットで一時的に日本に移す」という大胆な計画をやってのけた経営者たち。日本への移送・派遣に続いてタイでも復旧を進めます。 成功の先の親会社の判断 大洪水から年が明けた2012年1月、水が引いたタイで復旧が始まり、各社は生産ラインを2階以上に移すなど、新たな洪水対策に追われました。そんな中、山田さんが日本の親会社から受け取ったのは、タイ工場閉鎖の決定でした。Lapisの工場は平屋建てで洪水の際逃げる場所がなく、今後の洪水対策は難しいと判断したから、という理由で。 終わりと始まり 月末に山田さんはタイで社員を集め、それまでの感謝を述べてから、従業員を守れなかったと、頭を下げました。そして翌日には日本に飛んで派遣団にも閉鎖を伝えました。山田さんは当時を思い出し、言葉を詰まらせながら「会社を復活できなかったという敗北感がある」と言っています。しかし、閉鎖を伝える山田さんを迎えたのは、拍手と笑顔。従業員たちは、内心「第2の家」を失うことで感情が溢れ、心で泣いても、「山田さんたち経営陣が奮闘する姿をずっと見てきて、怒ったり悪く言ったりする人は一人もいなかった」というのです。しかし、そこで終わらないのが山田さん。「私は、社長はお父さんだと思う。……気持ち的に言うと、自分の子供が困ってるときにね、助けない親はいないでしょ」と、従業員にとっての第2の家を預かる父親として、希望者全員の就職先を見つけるまで奔走し続け、第2の家の子供たちが一人一人新しい道に進むのと同じように、自らも日本には戻らずタイで新たな会社に転じて、再スタートを切ったのでした。
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2025.03.10企業マネジメントタイ豆知識日本人経営者が対処したタイ大洪水~NHK新プロジェクトXに見る闘いと学び(1/2)
日本人で2011年の大洪水を経験して今もタイにいるという方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。当時いた場所や関わりの程度等様々かと思いますが、いずれにせよもう14年前。当時の様子をご存じない方の方が圧倒的に多いことでしょう。 そんな中、興味深い番組が1月に放送されました。 NHK新プロジェクトX『緊急派遣5千人 日本メーカーの総力戦~タイ大洪水 国境を越えた復旧激~』 https://www.nhk.jp/p/ts/P1124VMJ6R/episode/te/JR9VGQX4GX/ 見逃した方も多いかと思いますので、今回は2回に分けて、今タイで働く私たちが記憶すべきこと、そして参考にすべきこと等を見てみたいと思います。
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2025.02.24企業マネジメントタイから見る大阪地検元トップの性的暴行事件は他人事?人事視点でのニュースの見方(3/3)
<タイから見る大阪地検元トップの性的暴行事件は他人事?人事視点でのニュースの見方(2/3)>の続きです。 今回は標題に引用した事件のようなことが自分の身近で起こるのを防ぐために、特にタイでよく認識しておくべきリスク要因として最後に「権力格差」について見ていきたいと思います。 ●権力格差 異文化研究では、アジアの国が概ね権力格差が大きいとされていて、日本もタイも同様に集団の中で権力の弱い者が権力の不平等を予期し、受け入れている社会と言えます。平たく言うと、下が上を敬って、相応の対応をし、遠慮もし、時に無言のうちに忖度もする、そんな文化です。これは、敬語があったり、おじぎやワイ(タイの合掌スタイルの挨拶)も相手によって形を変えて敬意の度合いを変えたりする様子から理解しやすいと思いますが、その程度はタイの方がより厳格です。 それゆえ、日本/本社から来ているというだけで、ボジションが上というだけで、また給与格差なども影響を与えているのか、一般的に社の内外を問わず、日本人同士の関係以上に、タイの方から日本人が恭しく接してもらえていることはよくあるかと思います。自身のステイタスにふんぞり返るのはもってのほかですが、謙虚な方でも自身が思う以上にタイの方はその「謙虚な方」(あなたやあなたの周囲の方)の今の役職や権限に相当な遠慮(グレンジャイ)をしている可能性を、常に念頭に置きたいものです。 また、今どきの40代、50代は、一見昔ほど年長者感なく若々しく見えても、本人もそこまで年を取ったつもりがなくても、本物の若者から見ると、やはり紛れもない年長者であって、それだけで気軽に話せる相手ではありません。これは、上がどんなに気を遣っても、下からはそうやすやすと思っていることを何でも遠慮なく言える相手ではない、のが正直なところです。特に、20代や30代の女性からすると自分の父親ほどに年の離れた男性、それも仕事関係の上の人となると、それだけで怖かったりもします。 ましてや、ここは「微笑みの国」とも呼ばれる微笑み文化のタイです。不同意や困惑すら日本人には見分けのつきにくい笑顔で返されたりもします。否定的な意志を言語化する場合でも、自分の上に対しては、平素から極力ストレートに「No」と言わず、時にはどちらともとれるような曖昧な表現で返事をすることもあります。それも全ては関係をこじらせないためのタイのお作法であり、下から上へのマナーとして身につけて来ているのです。 殊に、職場を「第二の家」と呼ぶくらい愛着を持っている従業員の場合、失業率低く嫌なら即転職が盛んなタイでも、そこで働き続けたいがために、そこでの評価を落としたくないがために、何か嫌なことがあっても我慢をすることは多分にあり得ます。そんな時に、ローカルスタッフが安心して働ける、困ったことがあった時に相談できる体制や雰囲気、問題を報告できる術があるのか、良い従業員に長く勤めてもらいたいと思うのであれば、それらも点検・整備が必要なことです。 以上、どのようにご覧になりましたか? 今回タイに潜むリスク要因としては「お酒」「性に対する認知」「権力格差」の3つに絞りましたが、引き合いに出した事件では、その他職員や身近な方の代理受傷に組織の名誉・信頼失墜、職員のロイヤリティ・モティベーション低下等といった問題も孕んでいて、組織運営・人事の観点から実に多くのイシューを抱えています。 繰り返しになりますが、これらのことは、自分が直接的な加害者や被害者でなくても、身近で起こってしまうと、何らかの形で影響を免れられないことを想定しながら、海外で働く者としては、経済や国際分野のニュースも大事ですが、社会マターにもアンテナを張って現地要因も加味しながら予防に活かせるケーススタディに取り入れたいものです。
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2025.02.24企業マネジメントタイから見る大阪地検元トップの性的暴行事件は他人事?人事視点でのニュースの見方(2/3)
<タイから見る大阪地検元トップの性的暴行事件は他人事?人事視点でのニュースの見方(1/3)>の続きです。 今回は標題に引用した事件のようなことが自分の身近で起こるのを防ぐために、特にタイでよく認識しておくべきリスク要因として「お酒」と「性に対する認知」について見ていきたいと思います。 ●お酒 本件ほど世間を騒がす事件とまでいかなくても、やはりトラブルにはお酒が絡むことが多いものです。身近なところでも、セクハラ・暴行事件・公務執行妨害等、行為の内容は様々ですが、しらふであれば極めてまじめで仕事にも熱心で周囲からも慕われていた人が問題を起こし、降格、左遷、解雇等となったことは案外少なくなかったりします。 日本でも起こりえますが、タイという場所で考えた場合、日系企業駐在員の多くは運転手付きのカンパニーカーを使える状況かと思います。それによって日本では車通勤だったからそもそも飲酒の機会がほぼなかった、飲んでも終電を意識して適当に切り上げていたという方もとことん飲めるようになったり、現法のそこそこの立場や数少ない日本人となることで、職種不問で日本からの出張者やお客様の接待の機会が増えたり、ということもよくあるかと思います。 また、単身赴任者も一定数いることから、「他にすることがない」といった理由でも飲んだり誘ったりということもあるようです。異文化環境での仕事で抱えたストレスを発散したり、お酒を飲むことで親交を深めたり腹を割って話したり、とお酒に良い効果もありますが、やはり度を超えた場合のリスクはかなり甚大になります。お酒を楽しみながらもトラブルを回避するために、少なくとも、周囲から見て弱い人や酔ってしまったと思う人にお酒を勧めない、適宜水などを飲ませる、そもそも飲まないといけないという雰囲気を作らない、早く安全に家に帰らせるということは、自分に対しても、同席する全ての人に対しても必要な配慮です。 殊に、在タイ邦人コミュニティーの年長の方では、悪意なく善意のつもりで、「もっと飲んで」「遠慮しないで」と昭和的なマナーでお酒を勧める方がまだ結構いらっしゃるように見受けます。令和的には、リスク管理の上で適切に飲む、飲まないも受け入れて一緒に楽しむ、ということがマナーではないでしょうか? ●性に対する認知 バンコクを代表するオフィス街のシーロム・アソーク、そこから徒歩でも行けるほどに隣接しているタニヤにソイカウボーイをはじめ「女性のいるお店」へのアクセスが非常にいいバンコク。日タイの経済格差もあり、元々お好きな方は一層頻繁に、元々ご縁がなかった方でも仕事や交友関係で訪れる機会を持ちやすい環境。タイの方のニッコリ笑顔にサービス精神、しかもお金がより充実したサービスをもたらしてくれることに、幸せな勘違いに止まらず、危険な認知の歪みをもたらしている方も一定数いらっしゃるようです。 現法経営でローカルスタッフの給与水準を把握するようになると、それは自身の何分の一と大きな格差があることが分かりますし、駐在員の住居も大多数のタイ人従業員にとってはその家賃からして月給の何か月分かかかり一生暮らすことができないような豪邸です。自身にとっての夜のお店の女性と言えばタイ人となることで、お昼のお仕事をされているタイ人女性に対しても、その所得水準等から軽く見て、自身のタイでのステイタスでどうにかできると思ってしまっているケースがあることが、残念ながら見受けられます。同様のことは、現地採用の日本人女性相手でも一部で起こっているようです。 「日本だともうNGだけど」なんて枕詞を使ってタイではOKと勝手解釈の言説も皆さんどこかで聞いているのではないでしょうか? 皆さんに問題がなくても、周囲にリスキーな方がいることでいつか火の粉を浴びることになるかもしれません。日本でダメなことはタイでもダメと心得る方が賢明です。海外駐在員としてなら、仮に日本ではお金で済んだり罪に問われる法がなかったりしても海外では大問題になりうること(例えば双方同意であっても、既婚者であれば海外にはまだ姦通罪が適用される国)もありますし、訴訟云々に止まらず、タイもそうですが銃器も流通していて怨恨からの事件も頻繁に起きている国もありますので、あくまで仕事でその国に滞在している以上、トラブル回避の線引きは必要です。 続編記事はこちらから
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2025.02.24企業マネジメントタイから見る大阪地検元トップの性的暴行事件は他人事?人事視点でのニュースの見方(1/3)
皆さん、タイに来てからは日本のニュースをどのようにご覧になっていますか? 今は世界のどこにいても検索サイトやSNSを開くだけで何かしらのニュースが目に入ることに加えて、バンコクでは前々から日本の大手新聞の配達に日本の民放までも含むテレビ視聴サービスもあり、日本を離れていてもさほど浦島太郎にならずに済んでいるのではないでしょうか。 そんな中、最近の日本のニュースではどんなものが気になりますか? 例えば、特殊詐欺や闇バイトだと、日本にいる家族が被害に遭わないか心配になったり、容疑者がタイや周辺国で逮捕されることもあるのでタイにいても関心を持ったり身近に感じたりするのではないでしょうか。一方、大阪地検の元検事正が部下だった女性検事に性的暴行を加えた罪に問われている事件なんかはどうでしょうか? 「大阪か」「検察か」「性的暴行?」等とあまり自身にゆかりのない地域や業種・職種であったり、自分が事件の加害者にも被害者にもなることはないと思ったりすると、なかなか関心の対象とはならないかもしれません。また、2024年末には超大物タレントが民放幹部も絡むと言われる形で同局の若手女性に巨額の示談金を支払うような密室でのトラブルが発生していたと報じられています。これも同様に「芸能界か」とあくまで別世界の話のように感じられるかもしれません。しかし、こういった事件は、そのスキャンダラスな面に止まらず、経営の観点からも看過できない要素を多く含んでいます。特に、今このページをご覧の方には、現地法人の組織運営や人事に携わる方も多いと思われますので、自分の組織や身近でも起こりうること、といった危機意識を持つことが肝要です。 大阪地検のケースをもとに、現時点で被害者が記者会見で訴えたようなことが、自分の会社で、同僚や上司・部下、あるいは自分や身内が加害者・被害者になる可能性を一度想像してみませんか? 「いやいや、そんなことは絶対ない」と言えるでしょうか? 上司と部下が複数人で酒の席を持った後、泥酔して前後不覚の部下が、気づいたときには上司に密室で卑劣な行為をされていた、という状況になっていた。そして、熱心に働き組織に誇りも持っていた部下は深い傷を抱えながらも、仕事を愛し組織に影響を及ぼしたくなかったがゆえに、家族にも職場にも相談できず、一人苦しみ、一切を隠すように仕事に励んでいた。しかし、仕舞いには心身の健康を害し、仕事にも行けなくなった。その状態に耐えきれず職場で勇気を振り絞って申告したにもかかわらず、その内容が漏れてむしろ中傷されたり、関係者の処罰を放置されたり、と然るべき対処がなされなかった。その結果、組織の関係者も訴え、記者会見を開くに至り、全国に知れ、マスコミにも特に大きな関心を持たれる事態となった。 当事者・関係者としての想像力をどれだけ持てたかは分かりませんが、少なくとも自分の職場でこんなことが起きた場合を考えると、深刻さは多少なりとも感じたのではないでしょうか。もしかすると、「うちはそんなに名前の通った会社じゃないから」「タイでなら」として、もし何かあっても騒ぎにはならないと思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、今どきどこで誰がカメラを回しているか分からないものですし、一度それが良からぬ形で拡散された場合、またここが外国であることを考えた場合には、会社名ではなく「日本人」ということででも取り沙汰されて、いずれ会社探しが行われる可能性もあります。 本件を「タイから見る」形で、「お酒」「性に対する認知」「権力格差」という潜在リスクについて考えてみたいと思いますが、少し長くなりますので、その内容についてはまた別の回でお話しさせていただこうと思います。そのページを開くまでに、皆さんもタイにどんな特有の要因が潜んでいるか、一度考えてみてください。ご自分や周囲の方、あるいは会社がトラブルに巻き込まれないために。