2025.11.14タイ生活

タイ駐妻100人インタ⑥ 駐妻とは?

これまでの5回で、「駐妻」について、そのイメージは当事者になる前後でギャップが大きく、高学歴傾向と多種多様な職務専門性が見られ、揶揄や謙遜で使われる「旦那のお金」という表現もその実そうとは限らないものの、駐在員世帯もその待遇や福利厚生には幅があり住居も懐事情も様々、「マウント」については、そのものよりも「マウントと捉えられうること」の方が恐怖と見てきました。

タイ駐妻100人インタ① 悩める“駐妻”⁉ ~はじめに~
タイ駐妻100人インタ② となりの駐妻はキラキラ見える? ~想像と現実とSNS~
タイ駐妻100人インタ③ 駐妻は「無能」? ~今どき駐妻の学歴・職歴~~
タイ駐妻100人インタ④ 駐妻とJTCとお金の話
タイ駐妻100人インタ⑤ バンコク駐妻マウント考

「駐妻とは?」を改めて考える

お話を伺うごとに解像度が高まり、抽象的概念の「駐妻」から顔も性格も異なる個別具体的な個人の集合体へと見え方が変わることで、私は改めて「駐妻とは?」と考えるようになったのですが、共通して言えるのは「家族で一緒にいることを選択した人たち」位しかないのではないか? と思うようになりました。

調査サンプルの性質と今回のフォーカス

私がお会いした100人のうち、22人は私がインタビュー前から何度かお会いしていた方で、78人は初めてお会いした方なのですが、いずれにせよ、何らかのボランティアやイベントでご一緒したり、SNS上での私の呼びかけや先にインタビューに応じた知人友人の紹介・勧めで会ったことのない私に自分の話をしてもいいと思った人たちです。それゆえ、サンプルとしては、積極的な方が多いとも思われます。しかし、そんな方たちでも、駐妻に至る道の始まりを振り返ってみると、必ずしも積極的ではなかったケースが少なくなく、この点をとっても様々としか言えないのです。今回は、駐妻さんたちが配偶者からタイ駐在を知らされた時の反応や状況についてご紹介したいと思います。

「タイ駐在」を知らされた時の反応:諸手を挙げられたのは半数以下

それまで厳しい環境にいた人や夫婦揃って駐在を希望していた人では「やったぁ!」と当時の様子を歓喜いっぱいで再現する例も複数ありましたが、そのようにタイ駐在の知らせを聞いた瞬間に肯定的に受け止められた割合は43%に止まりました(以下、%=人)。肯定的な反応に添えられた声には、次のようなものがありました。「インドからタイにスライドで天国」「産休が人生最後の夏休みと思っていたのにまた休職できるなんてラッキー」「元々海外に興味があって自分でも出たことがあったくらいで、また海外に住みたかった」「旅行で訪れたタイが楽しかったので帯同も楽しそう」「ちょうど仕事を辞めたかったので前向きな理由ができて良かった」「夫の希望が叶ってよかった」「立ち上げからしていた仕事もキリよくちょうど辞めてもいいと思えるタイミングだった」「駐妻になりたかった」「夫とも旅行で来たことがあり、2人でバンコクに住みたいとかねてから話していた」「海外駐在は分っていたが、もっとハードな国の可能性がある中でタイに決まって安心した」「自分自身既に1回駐在していい経験だったので、夫にも駐在の機会があったらいいのにと思っていた」「コロナで内示がずっと延び延びになってもう出ない可能性も感じていたので、やっと決まって安堵した」「元々バックパッカー/帰国子女で海外好きだった」「ちょうど妊娠して休職するつもりだった」「ありえる夫の駐在先の中でバンコクは夫婦で希望している一つだった」「今なら子供の受験にも差し支えないからいい」「夫の長期出張が続いて1年ほど働きながらワンオペしたがあまりにもきつくて、タイならアウトソースにも頼れるしと賛成」等々。

否定的・複雑な受け止め

他方、「苦労して築き上げた生活環境を捨てるのは嫌」「自分の仕事を辞めたくない」「一度正社員を辞めて長らく派遣だったのが、ようやくまた正社員の職に就いたところで唖然」「転職したてでタイミング最悪」「帯同して帰ったら40歳住所不定無職になってしまう!無理」「子供が小さいので海外は面倒に感じた」「育休明けのシミュレーションをしていた中で、待ってくれた会社にまた働けないと言うのは……」「タイ料理が好きではなく」「なかなか決まらない駐在をあてにせず母子で新生活を始めて生活基盤が整ったところで何を今更」「米国は楽しかったがタイ/アジアにはワクワクしなかった」「欧米でなくアジア? シンガポールですらないの?」「家の着工直前に言われて絶望」「帯同はこれまでにもしたけど、子育て中は両祖父母がいる日本が良い」等という気持ちからの否定的反応は17%。

そこまでの拒絶反応はなかったにせよ必ずしも肯定的ばかりではない気持ちもあったという回答が36%で、次のような話が聞かれました。「夫のステップアップは嬉しかったが、自分の仕事を考えると悩んだ」「駐在は応援していたが、タイという国については……」「海外は嬉しかったが英語圏でなく残念だった」「仕事でモティベーションが上がらなくなっていたので休職できるのはラッキーと感じたが、同期と比べて、帰国後は窓際になるのかという不安も抱いた」「新年度の担任を引き受けた後でタイミングが……」「異動した部署での仕事がちょうど楽しくなってきたところだったものの、子供を授かることを考えると年齢的に離れているのも……」「自分にとってタイは楽しみだったが子供たちにとって良い選択なのか分らなかった」「他の国と言われてシミュレーションしていたのに国が変わって色々段取りも変わって戸惑った」「楽しそうだけど、転職したばかりの会社が休職できず勿体ない」「持病があって」「願わくばそのまま日本にいたかったけど、一緒にいたくて結婚したし」「『ついてきて欲しい』と言われたし、『タイ駐在』で検索したら夫が羽目を外して遊んでしまう気もし」「タイをインドのように思っていたからびっくりした」「夫の家族と同居していて夫がいないのに残るのも」「これまでも別の国で帯同していたが、時期的に子供の受験を考えて迷った」「家族は一緒の方がいい。でも、私の方が収入が多かったのに、夫の会社の都合上帯同するには『未就業の妻』である必要があり、つまり、会社を辞めなければならなくなった。」「夫も大事だけれど、家族や仲の良い友達と離れるのは……」等。

その他、配偶者がタイ駐在員の状態で出会って結婚した例が3%で、「それまでも単身赴任が当たり前になっていたので当初タイ駐在も自分には関係のないことと思っていた」という反応が1%見られました。

駐妻と仕事:仕事が「好き」86%、「嫌い」4%、「その他」10%

「(タイ)駐在」を知らされた時の反応に関して、肯定的であれ否定的であれ、ご自身の仕事に言及する人が多かったのですが、「漠然と『仕事』は好きですか?」とお尋ねしたら、「好き」が84%で、間髪入れずにそう答える方が多かったのが印象的です。「あなたにとって仕事とは何ですか?」という質問に対しての自由回答の内容を項目で分けると、「学び・成長・達成感」等を挙げた人が28人で最も多く、続いて「お金を稼ぐこと」を意味する回答が27人、「人との出会い・繋がり」17人、内発的動機を示す「生きがい・やりがい」と周囲との間に生まれる「評価・感謝・貢献・存在価値」が各16人、「好きなこと・楽しみ」や「自分の構成要素」という類が各14人、「居場所」13人、「必要不可欠」9人、「精神安定・安心材料」5人という結果でした。

「嫌い」と答えた4人は、退職済みの方と休職中の方とお二人ずつでしたが、「仕事」とは「面倒なこと」「責任」「自制心を培ってくれるもの。プレッシャーもあったが責任感もついた」「生活をするため、お金のため、やらねばならない義務的なもの」でした。

「その他」10人ですが、「好きではないのか、好きすぎて理想が高くてうまく持って行けていないのかよく分からない」「難しいことはできないけど、人と関わるのは好き」「分からない。結構怠け者。継続には自信がない。代わりに、いろんな環境を知りたくなる。」「ものによる。やりがい次第。」「んー」「しなくていいならしたくない」「仕事内容は好きじゃなかった」「好きでも嫌いでもなかったが楽しかった」等とコメントしています。

他の選択肢もある中での帯同決心

中には既に発言を引用したように、「ちょうど仕事を辞めたかった/休みたかった」という人も何人かいらっしゃいましたし、「仕事が嫌い」という方も「仕事が好きかどうか分からない人」もいらしたので、全員が全員仕事命だったわけでもないですが、割合で言うと、「自分の仕事」のことだけを考えるなら「辞めたくなかった」「続けたかった」という人の方が多く見られました。

私は、インタビューを始める際に、駐妻さんの学歴が全体的に高いのは想像していたのですが、勤続年数の長さや仕事への思い入れの熱さは、想像を大きく超えるものでした。特に、その苦労や挫折の話を含めて自発的にして下さる方が少なくなかったのが意外でした。例えばインタビュイー全体の平均年齢も含まれ、年齢層でも最も人数の多い30代後半では、リーマンショックや東日本大震災の影響による就職難の時代に就職活動をし、「エントリーシート100通出しても全然ダメで」「元々希望していた業界は箸にも棒にも引っかからず」「内定切りに遭いました」等のお話が所謂難関校ご出身の方からもご自身の歩みの一部として聞かせてもらえるとは全く思っていなかったのです。また、男女雇用機会均等法第一世代から就職氷河期世代といった上の年代では、まだ結婚や出産・育児で辞める雰囲気があったり、両立制度はできても実際の運用や受け皿が追いついていなかったり、はたまた不妊治療との兼ね合いで等、働ける条件がそれほど整っていなかったという方も結構いらしたのですが、その中でもできることを探して地道な努力を重ねていたこと等ありのままを話して下さる様子に、駐妻さんとしてお出でいただいていながら、駐妻であることを抜きにした個人の表情が見え、体温を感じ、漠然とあった「キラキラ」「マウント」等の駐妻イメージの霧が徐々に散っていく感じがしました。
思い通りの就職ができた方に限らず、必ずしも希望通りの就職先やキャリアでなかった方からも、仕事で困難な目に遭ってもめげずに努力で克服し、実績も信頼も築いたというお話をいくつも伺って、私も感情移入するあまり、思わず「辞めてたまるか」「辞めたくない」という気にもなり、帯同の道は決して簡単な選択とは言えないと思うようになりました。

それでも「家族で一緒にいる」を選んだ理由

そんなことを振り返ると、駐在を知らされた時に、明らかな拒絶反応や困惑が少なくなかったのも当然と思われますが、それでも皆さん最終的には帯同を決めて、バンコクにいらしています。そして、帯同を機に退職した人が約6割という数字の重みを改めて感じます(詳細:タイ駐妻100人インタ③ 駐妻は「無能」? ~今どき駐妻の学歴・職歴~)

自分のことだけでなく、単身赴任になった場合の配偶者のメンタルや夫婦の関係、お子さんと旦那さんの親子としての紐帯、お子さんにとっての海外経験、家族としてのバランス等を考慮した結果としての帯同。中には駐在帯同がその世帯にとって経済的に一番魅力的な選択肢だったご家庭もあると思いますが、今どきはそういったところばかりではなく、「世帯収入的には夫が単身赴任した場合の方が手当が多く得だった」「経済的なことを考えると私が日本に残って仕事を続ける方が色々メリットが多かった」という声も少なくなく、経済的動機は全体的に見るとそれほど高いものでもなさそうです。それゆえ、「駐妻」と大きく括って言えることは、やはり、「家族で一緒にいることを選択した人たち」位しかないと思うのですが、皆さんはどうお考えになりますか?

結語:大きな主語に慎重でありたい

これは自分の想像力の乏しさやよくも知らないのに目につく情報を盲目的に受け入れている部分があったことへの自戒でもありますが、「駐妻」をはじめ様々なグループ、国や民族名を示すもの等、1つのケースを見て全てと捉えないようにし、属性をもって大きな主語とする言説には受信・発信共に慎重でありたいものです。

<本記事はチャオプラヤー・タイムズ 「南洋茶話」第10回を許可を得て引用・転載しております。>

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タイでの人材紹介に必要な許認可手続き

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