2023.08.03タイの文化

タイが大好きになるBLドラマ

ステイホームで何が変わりましたか?
こう質問してみると、「実はタイ沼にハマりまして……」という人が少なからずいます。「タイ沼」とは、タイBLドラマにのめり込んだ状態のこと(だと思います)。BLとは、ボーイズラブの略語です。
どうかギョッとしないで下さい。タイBLは概してソフトです。学生同士や若い恋人たちの片想いに純愛、すれ違いや嫉妬をコミカルに描いた小説・ドラマが多く、ピュアな青春ラブストーリーとなっていることがほとんどなんです。

コロナ禍の中、暇なので観始めたタイBLドラマに夢中になってしまったという人の他、友達に「絶対面白いから!」と貸されてしまった翻訳小説をしぶしぶ読み始めたらやめられなくなったという人もいます。今では「推し活」をするほどの自他共に認めるファンでも、やはり最初は「えーっ、BL〜?」と少々怖気づいていた人が大半かもしれません。ところがファンになってみたら、なんだか毎日が楽しい。慣れないタイ生活の憂鬱な気分が消えた。ドラマのおかげでタイ語が聞き取れるようになった。教科書に載っていない若者言葉も覚えられた。などなど、皆さん満面の笑みで語ってくれます。

BL小説のおかげで偏見がなくなったという人もいます。BLなんてと思いつつ読んでみたら、描かれている恋心は男女の間と全く変わらない。切ない恋心に胸をキュンとさせながら「わかる、わかる」と共感しているうち、自然に偏見が消えていたのだそうです。そうよね、恋する気持ちは誰も同じよね、と。
タイはLGBTQにオープンなイメージがありますが、差別や偏見が全くないというわけではありません。タイ人にも日本人にも人気のBLドラマを通じて、差別が消えていけばこんなにいいことはないですね。

ひょんなきっかけで一躍脚光を集めたタイBLですが、実は、本家本元は日本なんです。日本文化の中では、非常に古くから同性同士の恋愛(または恋愛に似たもの)が登場しています。『源氏物語』には「小君」という少年が出てきますし、織田信長の話の森蘭丸も妖艶な美少年です。そうした基盤があるので、同性同士の恋愛小説や漫画も受け入れられていったのではないでしょうか。著名な作品としては、池田理代子作『ベルサイユのばら』、萩尾望都作『トーマの心臓』などがありますね。

ボーイズラブという言葉が使われたのは1991年が最初といわれています。「やおい(BL小説・漫画を総じて指す俗語)」や、「婦女子」をもじった「腐女子(BLを好む女子のこと)」などの言葉も生まれました。タイではBL小説のことを「ニヤーイY(ニヤーイ=小説)」、BLドラマのことを「シリーズY」というのですが、「Y」とは日本語の「やおい」の頭文字なのだそうです(ガールズラブの俗語「ゆり」も含むという説もあります)。日本のサブカルチャーが大好きなタイ人が始めたのが「タイBL」、つまり、BLの世界で日本とタイは切っても切れない関係にあるのです。

もともと日本の文化だったものがタイに伝わって「タイBL」になり、今度は「タイBL」が翻訳されて日本のファンを獲得しているというのは面白い現象だといえます。タイBL小説では、日本料理を食べたり日本のアニメを観たりなど「日本」に関連するシーンがちょっと出てくることがありますが、それは、作家たちが「本家」に敬意を払っているからなのだそうですよ。

 

さて、タイBLのヒット作ですが、ファンにとってバイブル的な地位を獲得しているのが『2gether』(2020)。思わず胸がキュンとしてしまう学園ものですが、あまりの人気に続編『Still 2gether』(2020)、映画版『2gether THE MOVIE』(2021)も生まれています。大学を舞台とした作品では『SOTUS』(2016)も人気。タイの大学生ってこんなことするの!!? という驚きのシーンから始まるのですが、恋が芽生えてからは目が離せなくなります。ちなみに、タイの大学には制服があるのですが、中国人のファンたちが制服のコスプレでタイ観光をするなんて現象も。タイ沼は中国でも広がっているんですね。

学園に飽きたら、『A Tale of Thousand Stars』(2021)もおすすめです。舞台はタイ北部の山の上。大自然の美しい風景がなんとも魅力的でついつい惹き込まれます。日本のファンには『千星物語』の愛称で親しまれている作品で、原作の翻訳版を読めばタイ社会のこと、山岳民族のことも深く知ることができます。ロケ地のドーイ・パータン(パータン山)の絶景を実際に見て感動したというファンも少なくありません。

次々と制作・公開されるタイBL。とても紹介しきれませんが、サスペンスにミステリー、ファンタジーなどジャンルも多様化し、女性だけでなく男性が楽しめる作品も増えています。サブカルチャーの一つとして、これからの広がりがますます期待できそうです。

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